【物価上昇】M&Aで解決できるか
2022年4月投稿で物価上昇が与える製麺業界への影響について見解を述べさせていただきましたが、その後も物価上昇は止まりません。円安もどんどん進み、原材料の高騰もしばらく続く見込みです。本来であれば円安の場合、外国人観光客によるインバウンド需要があって悪いことばかりではないのですが、新型コロナウイルス感染拡大防止の水際対策を引き延ばしている関係でマイナス面だけが大きく作用してしまっています。しかし、自分たちの力だけでは変えられない問題に固執するよりは、変えられることに目を向けるほうが建設的です。物価上昇にどのように適応していかなければならないのか、あらためて考えてみました。
「物価上昇は賃上げ共に」
2022年4月投稿でも同じフレーズを使いましたが、物価が上昇する分、賃上げもしていかないと人々の生活は苦しくなるばかりで、スタグフレーションが起こってしまいます。物価上昇と賃上げを両立しなければなりません。しかし、実際問題、これを実現しようとすると日本の商習慣には大きな問題があることにあらためて気づきます。
まず1つに「仕入価格が上がった分をそのまま販売価格に転嫁する。便乗値上げはしない。」という考え方です。日本の商習慣としては一見素晴らしい考え方ですが、このやり方だと利益は変わらないため、賃上げは不可能なのです。10%仕入価格が上がったならば10%販売価格を上げていかなければ、原価率はどんどん上がります。売上1,000万円、仕入300万だと原価率は30%です。仮に仕入が400万円になったから上がった分の100万円を売価に乗せて1,100万円としたら、原価率は約36%になってしまいます。製造業、飲食業を経営していれば、この異常さは一目瞭然です。
そしてもう1つ、日本社会には労働生産性の観点で1つの闇があります。それは「サービス=無料」「サービス=当たり前」という感覚です。当社の経営理念は「お客様の笑顔を創り続ける」となっていますが、お客様に喜んでもらう、悲しませないために、様々な対応をしてきました。いくつか例を挙げると以下のような対応です。
・注文締切時間を過ぎて入ってきた注文も可能な限り対応する。
・いつも通りの注文が入らなかったとき、忘れているかもしれないからこちらから電話で確認する。連絡がつかなければ見込で製造してお客様のところに持っていく。
このような対応はとてもお客様に喜ばれ、感謝されます。1つ1つのお客様の事情を把握しているからこそできる芸当と言えるでしょう。しかし、その裏では以下のようなことが起こっています。
・すでに終わってしまっている製造工程を再度動かす。
・1顧客のためだけに配送員を手配して配達する。
・注文を忘れているかもしれないからと、見込みで配達したにもかかわらず結果として注文していなければ廃棄する。反対に注文がないからと配達しなかった場合、やっぱり忘れていたということになれば再配達が発生する。
これは紛れもない事実であり、このサービスが無料で、当たり前になってしまうと労働生産性は下がるばかりです。そして残念なことにこのサービスを一度してしまうと、やめようとしたときにお客様が離れてしまう、あるいは他社であればそこまでやってくれると言われてしまうこともあるのです。ただ単に原材料が高騰したから値上げするでは、お客様に丸投げです。そうならないように労働生産性を高めていくことが必要不可欠なのです。日本の労働生産性が海外よりも大きく劣る、その1つの理由が「サービス=無料」「サービス=当たり前」という歴史にあり、その歴史を作ってしまったのが他でもない自分たちなのであれば自分たちで変えていかなければなりません。
「M&Aがなぜ物価上昇に対抗しうるのか」
「価格転嫁(原価率)」と「サービス(労働生産性)」の問題を取り上げましたが、物価上昇と賃上げを両立するためには、この2つの問題に切り込んでいかなければなりません。単に値上げをして賃上げをすれば解決というわけにいきません。そしてこうした問題を外科手術的に解消する1つの手段がM&Aにあるわけです。M&Aをすることで仕入れにおいてはスケールメリットを活かし原価率の抑制につながります。生産性においても工場ラインを相互に活用することで、商品特性や地理的条件に応じた効率的な製造を実現し、労働生産性は向上します。M&Aは物価上昇にも対抗しうる有効手段であると当社は考えます。