最新情報

INFORMATION

【M&A事例】民事再生企業の可能性 ~その1~

M&A事例

M&A最新情報のコラムは数か月にわたりお休みしていました。そのわけは2社目のM&Aを実行中で余裕がなかったからです。おかげさまを持ちまして、2023年6月16日、大成食品株式会社は比留間製麺有限会社から新設分割により設立された比留間製麺株式会社を、株式譲渡にてグループ会社に加えることになりました。比留間製麺株式会社は、焼きそばなどで使用される「蒸し麺」を得意とする製麺所です。

今回は民事再生のスポンサー企業という立場でM&Aを実行しました。当社としてもはじめての経験であり、全3回にわたって事例紹介をさせていただきます。まずはそもそも民事再生とはどういったスキームなのかを踏まえ、民事再生案件に対する当社の考え方に触れていきたいと思います。

「民事再生とは?」

そもそも民事再生とはどのようにして企業を再生するのか、簡単に解説します。民事再生となる企業は、いわゆる債務超過を起こしてしまった企業、そのように捉えてもらって差し支えありません。会社の現預金に加え、土地や建物などの資産を全て売却したとしても借入金のほうが大きい、それが債務超過です。債務超過になると借入の利子なども膨らみ、本業とは無関係な出費も増えてキャッシュフローが悪化します。なんとか業績を向上させることができれば良いですが、経営者は資金繰りばかりに時間を割かねばならず、効果的な打ち手を打つ余裕がありません。そこで民事再生という手法が登場するわけです。

債務超過を起こしているということは、多くの債権者が存在するということです。仮に債務が2億円で、資産が1億円だったとします。1億円の債務超過を起こしている状態だと買い手はなかなか見つかりません。買い手がつかないと倒産です。その場合は資産1億円を売却して得た利益を債権者がそれぞれの債権比率に応じて分配します。不足分は貸倒となります(実際は土地などの資産は担保設定されていることが多いため、金融機関がほとんど持って行くことになります)。これだと何の変哲もない企業倒産です。ですが、民事再生の申請をすれば、債権者に対してより多くの返済が可能となります。

民事再生を申請すると、既存企業を分割するかたちで新会社を立ち上げることになります。新会社は既存会社から事業継続に必要な全ての資産を引き継ぐのですが、このとき負債は一切引き継ぎません。スポンサー企業は負債ゼロの新会社を資産1億円に将来の利益を上乗せした価格でM&Aすることになります。そのまま倒産するよりも、上乗せした将来の利益分だけ債権者の取り分は多くなり、またそこで働く労働者の雇用を守ることができます。さらにスポンサー企業は自らの力量によってより多くの利益を生み出すことができれば、まさに三方良しと言えるでしょう。

いやしかし、債権者は損害が軽減されただけで損をしていることに変わりない、そのような声も当然あると思います。そのような問いに対するスポンサー企業の回答は未来にこそあります。仮に債権者に対して満額の2億円が返済されたとしても、会社が精算されてしまったら、債権者である仕入先との取引はそこで終わりです。損はしていませんが未来の利益は永久に訪れません。民事再生により事業が継続し、今度こそ安定した経営が実現するならば、債権者であった仕入先各社には未来の利益というかたちでお返しすることができます。これはスポンサー企業に与えられた使命であり、それをもって三方良しとする、それが当社の考えです。(つづく)

\ Please share! /